hey!〜祭りのあとも萌え〜参

このエントリーをはてなブックマークに追加
965そうかて 1/2
「あれ、誰もいねぇのか?」
調理室の扉を開けるなり、倉曹掾はつまらなそうに呟いた。
彼自身の言葉通り人影のない室内から返ってくる返事はもちろんなく。
シン、とした空間にその声はどこか虚ろに響いた。

しばらくの間、その場で思案するように立ち止まっていた倉曹掾だが、やがて仕方ないというように肩をすくめると律儀に扉を閉め調理室へと足を踏み入れた。
手近な調理台へ鞄を放ると、文庫本を手にいつしか定位置と化した窓際へと移動する。
と、それまで影になって見えなかった場所に人影がひとつ。

「なんだ、かてタンいるじゃん・・・って、寝てるのか」

日のあたる窓際につっぷすようにして気持ちよさそうにかてものが眠っていた。
覗き込んでみても起きる気配はない。

つん。
「ん・・・・」
つんつん。
「んん・・・・」
「あ、面白れぇ」
つんつんつん。
「ん〜〜〜〜っ」

頬をつつく度に反応するのが面白くて、倉曹掾は何度か同じ動作を繰り返した。
仕舞いには、煩そうにかてものに手を振り払われる。
が、それでも起きる様子はない。
966そうかて 2/2:02/09/25 23:39 ID:rNoQHcC8
「・・・・・普通、起きないか?」
どこか呆れたように倉曹掾が呟くが、もちろん、それに対する返事はない。

かてものをからかうのにも飽きたのか、倉曹掾は窓を開けると椅子を持ち出し手にしたままだった文庫を広げた。
静かな部屋に響くのは、ゆっくりとページを繰る音と柔らかな寝息。
開け放たれた窓から放課後特有のざわめきが遠く聞こえる。

「っと、このままじゃ風邪ひくな」
ふと、本から視線をあげた倉曹掾が背後のかてものを見やって呟いた。
いくら日があたっているとはいえ、秋の気配を色濃く含んだ風は少し肌寒い。
「風邪なんてひいたら隊長が心配するだろうし・・・・」
誰にともなく言い訳しながら、倉曹掾は自分の着ていた学ランの上着をそっと眠ったままのかてもにはおらせる。
「・・・ん・・・そうタン・・・」
「起きたのか?」
「そうタンは・・・放置・・・」
「・・・・・・・・・他に言うことないのか、かてタンは。つーか、どんな夢見てんだよ・・・」
どうやら寝言らしいかてものの言葉に思わず倉曹掾が脱力する。
あまりのタイミングにぼやく声にも力が入らない。
「なんつーか・・・・いいけど・・・」
尚もぶつぶつとぼやきながら、かてものから離れ椅子に座り直す。
読みかけの本を開いて。
再びゆっくりとページを繰る。


傾き始めた大陽がオレンジに染める調理室。
風に乗って部活動に励む生徒達の声が微かに聞こえた。


穏やかな、秋の日の放課後。