hey!〜祭りのあとも萌え〜壱

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994かてもの殿支援SS
 「フライパンの熱さは、こんなもんかな」
そう言いながら、かてものはホットケーキの生地をフライパンに流し込んだ。
ジュ〜という音と共に、ホットケーキの甘い匂いが辺りに漂う。

 日差しも強くなってきた季節。
三戦学園の家庭科調理室では、食い物部隊の面々が集まっていた。
食い物部隊と言っても、人数は少なく
活動規模もそんなには大きくないのが現状なのだが。
 その食い物部隊の一員、かてものはひたすらホットケーキを焼いていた。
『一番おいしいホットケーキを作るんだ』
そう心に決めて、今日もフライパンとにらめっこを続ける。
食い物部隊というプライドもあるのかもしれなかったが。
995かてもの殿支援SS:02/08/18 00:43 ID:XSAEuTlK
 徐々に焼けてくるホットケーキ。
表面に泡が出てきたら、ひっくり返し時である。
「よっ・・・と」
うまい具合にひっくり返すと、焼けた面はこんがり狐色。
鼻をくすぐるいい匂いも、より一層強まってきた。
 コンロの火を少し弱めにして、かてものは焼き加減を調節する。
「今度こそ、おいしくできますように〜」
にこにこと笑いながら、ホットケーキを見るかてもの。
ホットケーキは次第に膨らみ始め、ふわふわと厚みを増してきた。
 「おーい、かてもの殿ー、
  生徒会に持っていく差し入れできたかー?」
ふいに冷や汁を作っていた迷子、倉曹掾らがかてものに声を掛けた。
「もうちょいで完成ー。あと一枚できたらオッケーだよー」
かてものはそう返事をし、焼きあがったホットケーキを皿に移す。
「まだ時間かかりそうだなー」
「ごめん、先に行ってていいよ」
「じゃ、俺達先に行ってるからなー。
 ゆっくりでいいから、後で来いよー」
 かてものを一人残し、食い物部隊は生徒会への差し入れを持って調理室を出て行く。
残ったかてものは、フライパンに油を引きなおし火力を上げた。

 「ふう、これで完成っと・・・」
ようやく焼きあがったホットケーキを皿に乗せ、かてものは調理室を後にする。
「生徒会室は、こっちの方が近道かな・・・」
焼きたてのホットケーキが冷めないように、足早に廊下を歩くかてもの。
ほわほわといい匂いを漂わせながら、生徒会室へと進んでいく。
 そして廊下の突き当たりにある階段にさしかかった時、聞き覚えのある声がした。
「又も礼儀を慎みて 上を敬い上よりは
 下を愛して一筋に 和諧を旨と心せよ・・・」
「うんこ殿、何してるんですか?」
996かてもの殿支援SS:02/08/18 00:43 ID:XSAEuTlK
 階段の所に座っていたのは、三戦うんこ。
軍人勅諭を諳んじて、一休みしていた模様である。
「かてもの殿か。・・・いや、次の戦に向けてちょっとなー」
「次の戦・・・、ほのぼの学園とだよね。
 俺達、食い物部隊が適う相手なのかなぁ?」
「ウチの学園も大変だよなぁ、対戦相手が全部曲者でやんの」
「また、他人事みたいに・・・。
 うんこ殿も、三戦学園の一員なんだよ。
 それに今度は、食い物部隊が主役なのに・・・」
かてものは呆れた風に溜息をつき、三戦うんこを睨み付ける。
「主役だから、頑張るんだろ?
 俺は今回、縁の下の力持ちになるからなー」
「縁の下の力持ちはありがたいけど、俺なんかの料理でいいのかな・・・」
「心配すんな、かてもの殿を見てた奴は理解してるぜー。
 かてもの殿が、どんだけ料理を頑張ったか。
 祭り要員で、事務的になりがちな生徒会を賑やかしたか。全部なー」
そう言うと、三戦うんこはかてものを見やった。
997かてもの殿支援SS:02/08/18 00:44 ID:XSAEuTlK
 「それ、冷めちまうぜ。差し入れなんだろ?」
はっと気がついた様に、かてものは階段を上ろうとした。
が、一歩踏み出した所で留まると、ぼそっと呟いた。
「・・・うんこ殿は見ててくれたんだ・・・」
「俺だけじゃないぜー、ニラ殿も、生徒会のみんなも
 かてもの殿の頑張りを見てたんだぜー。
 ・・・だから、しっかりしろよ」
 その言葉は、かてものにとって重要な言葉となっていた。
自分一人が空回って、あほな事ばかりしていると思い込んでいたのに、
ちゃんと見てる人がいた。
それだけでも、今のかてものには充分な意味を持つ言葉だった。
「・・・ありがとう、うんこ殿!」

 かてものは勢いよく、階段を駆け上がり
生徒会室へと足を進める。
その背後からは、こんな歌が聞こえていた。

「砲工歩騎の兵強く 連戦連勝せしこそは
 百難冒して輸送する 兵糧輜重の賜物ぞ
 忘るな一日遅れなば 一日たゆとう兵力を」

―終わり―