hey!〜祭りのあとも萌え〜壱

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969風と木の名無しさん
流れ遮って投下。玉韮ssに8レス程使用させていただきます。
正直長いのはわかってるんだけどもうどこを削っていいか
分からなくなってきたのでそのままです。冗長でごめんなさい。
なんかキャラ違うくなってしまったたま殿と韮タンにもごめんなさい。
他にもいろいろごめんなさい。
自分が本命とか言われてもそうは思えなかったし、あの子はいつも誰かに懐いて
構って、そういう子だから別に自分だけ特別に想われてるとも思えなかった。
そんな子だからみんながあの子の事を可愛いと思うのも当然だったし、だから
自分だけがあの子の事を可愛いと思ってるわけじゃないことだってよく分かってた。

それがあの子のつき合い方なんだし、例えば自分のことを本命って言うのと同じように
他の誰かのパシリになったり、そういう風に役割を作って遊ぶのが好きでやってるだけなんだ。
だから自分だって深く考えないでそれに乗ってあげれればあの子が喜ぶし、
それで済む話なのにどうしてだか自分はそれをしたくなかった。
だって、ただ話を合わせてあげるだけなんて、なんか違う気がして。

だから、自分の好みとかそういうのを普通に話したけれど、あの子にとっては
それが求めている反応と違うみたいでウワァァァァァァァァンされたり落ち込まれたりしてて、
そのたびにちょっと自分も困った。どうしたらいいかわからなくて。
あの子は何が欲しいんだろうとか考えちゃったりして、そう思ってふと見ると、
あの子はとっても楽しそうに他の人にお茶出ししたりしてる。それで自分は
「あぁ、そうか。これがあの子の遊び方でなつき方だったんだっけ」
って思ってなんだか自分が恥ずかしくなったり、そういうことを自分の中で
何度も繰り返してた。
振り回されて、翻弄されて、ぼろぼろになってっていう、そういうのでぐだぐだになるのも
いいなってずっと思ってた。見返りがない分殉じる感じがして、その分純粋な感じが
するからかもしれない。よくわからないけど。わからないけど好きなんだから、多分
それが好みというものなんだと思う。どうせならそういう感じで殉じて死にたいなとか
そういうことを思ってた。無理なのはわかってるけど。
好きだからその人の一番の幸せを望みたいけど、自分が人一人、ちゃんと幸せに出来る
なんて思い上がってもいない。
だからあの子が幸せになる方法が他にあるなら、別に自分がそこにいなくたって全然
構わなかったんだ。だからそういうようなことを言ってみたんだけど、なんだかまた自分は
違うことを言ってしまったようで、とうとうあの子は泣き出してしまった。
なんで泣くのかわからないよ。どうすればいいの?君が幸せになることを願うだけじゃだめなの?
わからないよ。

自分はどうすればいいのかもわからないまま泣いているあの子を見ていた。
綺麗な泣き顔なんて普通あるもんじゃないし、実際その泣き顔は特別綺麗でもなかったのに、
それでも自分はなにかとても綺麗なものを見ているような気がして、あの子を見ていた。
こういうとき、普通は慰めたりとか、頭をなでてあげたりとか、そういうことをしてあげなきゃ
いけないのかなと思ったけれど、自分はそれすらも出来なかった。ただあの子を見ていただけ。
へたれだってみんなが笑ってもしょうがないと思う。でも。
綺麗なものに、そう簡単に触れることなんて出来るわけないじゃないか。
簡単に触れることの出来るものなんか本当の綺麗じゃないんだよ。
初めて会ったときから大好きで、他の人と比べてあんまり頻繁に会えなかったから
遭えると凄い嬉しくて、そのたびにまといついて、つんつんしたりいろいろ話しかけたり
して、そういうのが凄く楽しくて、幸せだった。
あの人はどっちかっていうと穏やかな人で、一緒にはしゃぐ訳ではなかったけれど、
そんな自分とも一緒に遊んでくれて、一回なんか勝手に自分があの人を待ってただけなのに、
諦めて帰った後にそれを知ってあの人はごめんね、って謝ってくれたりもした。
妹に言われるまでもなく自分はお調子者で、そういうの、よく分かってたはずなのに、
いっつもあの人にあうとその事を忘れてしまって、後になってはしゃぎすぎてたかなって
思ってしまってとても悲しくなる。あの時も、自分が待ってたのは待ち合わせでも何でも
なくって、勝手に期待して待ってただけなのに。あの人が困った顔で謝りに来てくれた
時、また自分が調子に乗りすぎたんだ、と思って、落ち込んだ。一緒にお仕事出来る機会は
あのときが最後かも知れなかったし、だから自分も一生懸命だったんだけど、それでも
勝手に待ってた自分に謝りに来てくれたあの人は凄い優しい人だと思って、自分は更に、
恥ずかしくなった。恥ずかしくなりついでに、誰にも言えないけれどもっと、好きになった。

あの人はいつもちょっと困った風に笑うのが癖で、そういうところ、あの人の優しい
部分が見えるようで好きだった。ずっとそういう風に思ってた。でもいつもの場所で
自分以外の人とあの人がおしゃべりしているのを見たら、なんか全然困った顔なんか
してなくって、胸がずきんとした。
考えてみればお互い会えるとき、じゃれかかろうとして、つんつんしたり、そういうのは
いつも自分の方からであの人も時々自分につんつんしてくれたけど、頻度で言えば俺の方が
断然多かった。あんまり会えないのもお仕事があるから忙しいってわかってたけど、一度
そういう風に考え始めるとどんどん悪い方向に向かっていくようで、誰かに言ったら
笑われそうだけど、恐くてそれ以上考えたくなかった。他の人がいっぱい遊んでくれたって、
やっぱりあの人が来てくれた時が一番嬉しいし、幸せなんだ。
もしちょっとでもウザイとか重いとか思われてるのが解ったら俺はきっと死んでしまう。
初めはもっと単純に大好きだっただけなのに、なんだか好きになればなるほど好きだけじゃ
なくってもっといろいろ複雑な気持ちになって、だからといって嫌いになるわけでも萎える
わけでも全然なくて、でも好きな気持も膨れあがる一方で、どうしたらいいかわからない。

「好き」ってこんなに複雑なことだったんだっけ。
もっと綺麗な綺麗な気持だと思ってたんだけど、なんだか違うみたいだ。


ひさしぶりに(他の人もいたけど)ゆっくりお話する機会があった。
他の人のどきどきするようなお話とかも気になったけど、それ以上にあの人が好みとか理想とか
そういうのをお話ししてくれて、正直俺はもしかしたらもの凄いチャンスなのかも、と思った。
でもあの人がショタだっていうから自分の小さい頃の写真を見せようとすると
「それじゃ意味ない」って言うし、じゃぁどうすればって聞いたら「今美少年なら激しく考える」
って言う。自分を美少年だなんて、そんなアピール、俺から出来るわけないじゃないか。
おまけにそういう美少年に貢いで、裏切られて、失意のどん底で、 最後には哀れな死を
迎えたいなんて、そんなこと言われたって。
あの人がそんな風に死ぬ事を考えただけで俺は悲しくてどうしようもなくなる。
どうしてそんな悲しい事を言うのかわからない。どうしてそんな事を望むのかわからない。
仮に俺が、あの人がどきどきするような美少年になって、貢いで貰って、それであの人の
理想に近づけたとしても、俺は絶対にあの人を裏切るなんてそんな事できない。できっこない。
考えただけで涙が出てきちゃうよ。
堪えきれなくなって、莫迦みたいだけど、俺は本当に泣き出してしまった。

あの人は困ったようにそんな俺を見ていた。
あの人の困った顔はいつものことだったけれど、泣きながらやっぱりこの人が困った顔を
していたのは自分のせいだったのだと思えて仕方なくて、それがますます悲しくて涙が止まらない。
自分が幸せにできそうにない場合、あえて譲る道を選びたいとかいうのは駄目ですか?
…別に嫌ってるわけじゃないんですよ


泣いている俺に愛想を尽かしたのかもしれない。ぽつりとあの人は呟いてどこかへいってしまった。
「駄目に決まってる」
泣きじゃくっていたから上手くしゃべれなくて、あの人に俺はその一言すら言えなかった。
一人で泣きながら心の中、あの人の言葉に反論する。

そんな簡単に譲らないでよ。幸せにしてなんてお願いした事もないし考えた事もないよ。
ちょっとでも俺の事、嫌ってる訳じゃないなら尚更そんな事言わないで。
だってたまどのがいればそれだけで俺はいつだってとっても、とーっても幸せだったんだから。
どこにいるかもわからないあの人に向かって叫ぶ。

「だったら、俺がたまどのを幸せにするよ! 」

でも、その反論はあの人に届かない。俺がそう思ってるって事、あの人はわからないんだ。
俺の幸せが何かも、あの人は知らないんだ。
莫迦みたいだった。
今気づいたけれど、俺はそんな、一番単純で大切なことをあの人に伝えていなかったんだ。
そんなの、何一つ伝えてないのと変わらないじゃないか。

一度は収まりかけたのに、涙がまた溢れ始めた。
それはもうさっきの悲しい涙ではなく、後悔の涙に変わっていた。
あの子に泣かれてから仕事も周囲もいろいろと忙しくなって、会える機会が更に減った。
それは逆に自分にとっては少しありがたいことだったけれど、その分、更にあの子の事が
気になってちょっと自分が莫迦みたいだなって思った。あの子に関して、考え始めると
そこに行き着くのはいつもの事だったのだけれど。
それでも自分の言葉があの子を泣かせてしまったことだけはやっぱり事実で、
でもそこまでの力が自分の言葉にあるのか、やっぱり信じ切れないままでいる。

流石に堂々と顔を出すことは憚られて、こっそりといつもの場所を覗いてみたけれど、
相変わらずあの子は他の人に楽しそうにお茶を出したり、姐さん達に遊んで貰っていたり
していた。今までと同じだった。

ほらね、心配することなかったじゃないか。

あの子の事を心配していた自分を慰めるようにそう言ってみたけれど、何故か心は沈んでゆく。
美少年に尽くして、それから裏切られるのが理想なら、尽くすどころか、めいっぱい懐かれながら、
そのくせ初めから裏切られてるのなんて充分過ぎるほど理想じゃないか。
ずっと心に暖め続けていた理想がここにあることに、微笑んでみようとしたけれど、
どうしてだろう、奇妙に口が歪むだけで上手く笑えない。
あの子はいつも通りだ。ちょこまかと忙しそうに立ち回ってあちこちでいろんな人に可愛がられている。
そして自分は、胸にあるこの気持がどういう気持なのかよくわからなくて、
どうしようと思いながらあの子の事をじっと見ている。

気が付くとあの子はいつもの作業と違うことをやり始めていた。
雑談出来るような場所を作って、手作りの看板を立てている。看板には遠くからでもよく見える文字で
「密会所」
と、あった。
密会の場所なのに堂々と看板を掲げるのがわからない。だいたい誰との密会なんだろう?
よく見ようと思って隠れていた場所から思わず顔を出すと、簡単にあの子に見つかってしまった。
結構距離があるのに、息せききって走ってくる。

「たま殿、久しぶり!お元気でしたか?今度俺、たま殿との密会所作ったんです」
「自分との?」
「ずっと、自分が何を望んでるのかと疑問になってた訳ですが
 たぶん、もっとたま殿といろんな話がしてみたいんじゃないかと。くだらない雑談とかでいいんで。
 何というか、同じ流れでずっと話すのは今まで不可能だったわけで一回、おもいっきり雑談しまくってみたい。
 そうしたら、すっきりするんじゃないかと思ったので。
 わがまま言ってごめんなさい」

自分にそこまでする価値があるとも思えないのに、どうしてこの子はいつもこんなに直球なんだろう。
自分だけじゃなくて他の人ともあんなに仲良くしてるのに。それなのにどうして自分なんだろう。

「…別に全然、わがままじゃ、ないと思うけど」
「良かった!こっちです。来てください」

あの子はにっこり笑って手を差し出した。それがどういう意味かわからなくて戸惑っていると
「こう!」と言ってくすくす笑いながらあの子は自分の手を引き寄せて握りしめた。
きゅっと暖かい感触が自分の手を包み込む。始めての感触だったけれど、どうしてだか泣きたくなる
くらいに暖かかった。繋がれた手と手を見てあの子はえへへ、と笑う。
そしてその笑顔から少しだけまじめな顔になって、

「俺ね、今、すっごい 幸せ 、です」

一言一言、区切るようにあの子はそう言った。まっすぐ自分を見上げ目が心なしか真剣だった。
目が合って、自分がどうしたらいいか分からないでいる間にもう一度あの子はにこっと笑う。
遠くから見ているだけでいいと思っていた笑顔がそこにあった。
美少年とか顔のつくりがどうとかそういう事じゃなくて、それはやっぱり綺麗な笑顔で
どぎまぎしてしまう。

「幸せ?」もう一度聞き返したいと思いながら出来ないでいると、「行きましょう」
とあの子は例の密会所に向かって走り出す。繋いだ手を引かれてためらうゆとりもなく、
自分も後について走り出した。
目の前を走るあの子は本当に嬉しそうで、その対象が自分であることが未だに信じられない。
でも。あの子が言った言葉が自分の中でぐるぐる回り続ける。上手く言えないけれど、
何かに許された気持になって、大丈夫だよって誰かに背中を押された気持になって、
もうあの子を泣かすことだけはしないようにしよう、と気持が固まってゆく。
その気になればそうできる力が自分にあると思えるようになるなんてちょっと前までは
考えてもいなかったのに。何故かとても心強い気持がぐんぐんと胸の中で膨れあがってゆく。
不思議な気持だった。根拠なんてない。あるとすればそれは多分この手のぬくもりと
前を走るあの子の笑顔だ。まだちょっと不安も残るけど、前よりももっといろんな事が
出来るような気がし始めている。

看板の前に着いて、あの子はもう一度自分を振り返って嬉しそうに笑う。
その場所の入り口で、気が付くと繋がれたままだったあの子の手を強く握り返していた。