hey! トーナメントで萌えpart40

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982無名武将@お腹せっぷく

 うたを わすれた かなりやは
  うしろの やまに すてましょうか・・・


 六月二十二日、その日は嵐が合戦場を襲っていた。
「すっげえ風だなー!このスレぼろいから、すっ飛ばされそうだぜー!」
三戦学園内にある物置(通称うんこスレ)。
このうんこスレの窓から外を見ているのは、うんこスレの実質的な主、うんこ孫策。
棒読みと、変な喋り方が特徴的な奴である。
「孫策、窓開けんなYO!本当にすっ飛ばされたらどうすんだYO!」
窓に張り付く孫策を一喝する、無名武将@お腹ゆるゆる。
予選終了時に切腹して果てたとも言われていたのだが、
つまったトイレよろしく、ある日突然うんこスレに帰って来ていたのだった。

「そういや、うんこタンクはどこ行ったんだ?昨夜から見かけないぞ」
咥えタバコに無精髭のゆるゆるは、かったるそうに孫策に話し掛ける。
「あいつなら、生徒会の連中と一緒に合戦場に行ったぜー!
 なんか、AA作る道具持ってたなー!」
孫策は窓から離れ、うんこスレに転がっているテレビのスイッチを入れた。
 テレビは誰かがここに捨てていったものらしく、最初の内は何も映らなかったのだが
ダウソが合戦の実況中継を開始する際に孫策が修理し、ようやく見られる状態にまでしたシロモノだった。
「う〜ん、映りが悪いぜー!内アンテナだからかなー?」
「ンな訳ねーだろ、こんなもんは叩けば直るんだYO!」
ガチャガチャとチャンネルを回す孫策を押しのけ、ゆるゆるはテレビの横っ面を乱暴に叩いた。
ザザーッと一瞬砂嵐になったテレビは、さらに映りが悪くなるように縦に流れ
それからしばらくして、正常な画面に近くなって安定した。
「やったー!映ったぜー!さすがゆるゆる大兄だぜー!」
983無名武将@お腹せっぷく:02/08/02 17:28 ID:4UzQplyv

 ゆるゆると孫策はテレビから流れてくる映像に注目した。
そこに映し出された映像は、学園に吹き荒れる風の何倍もの威力をもつ大嵐。
広い投票所を席巻する嵐の中心部で、陣を構える厨房学園と
本陣が飛ばされないように耐えている三戦学園の姿だった。
「な、なんだこれはYO!投票所、めちゃくちゃ荒れてんじゃんかYO!」
「タンクは?うんこタンクは無事なのかー!?」
思わずテレビに駆け寄り、不安そうな顔をする二人。
生徒会も心配だったが、やはり同胞のうんこタンクの事が気がかりだったようだ。。

 ごうごうと吹き荒ぶ風と、激しく轟く稲光。
あまりの凄まじさに応援用の垂れ幕も、次から次へと飛んでいく有り様である。
そんな中、ダウソの実況が始まった。
『えー、こちらは投票所です。
 ただいま、もの凄い雷雨の為に、正確な情報のお届けが困難となっております。
 我々と致しましても、情報がお届けできない事態は予測していなかったので、
 このまま映像のみでお送りしたいと思います。どうか、皆さんご了承ください』
テレビの向こうの実況班は、今にも吹き飛ばされそうな格好で必死にカメラを回し
投票所こと合戦場を映し出している。本当の命懸けとは、こういう事を指すのかもしれなかった。
 そしてカメラが三戦本陣に焦点を合わせた時、三人の人影が本陣から飛び出していった。
「ゆるゆる大兄!今の見たか? 抜刀隊だぜー!!」
「へー、これが抜刀隊ってやつかー・・・ん?」
「大兄、どうしたー?」
「おい孫策、抜刀隊の先頭の奴・・・なんか見覚えねえか?」
そう言っている間にも、抜刀隊は華麗に『悪・即・斬』を決め、投票所を沸かせていく。
そして先頭の、『悪』と大きく書かれた半被を着た人物が身を翻した瞬間、二人は驚いた。
984無名武将@お腹せっぷく:02/08/02 17:29 ID:4UzQplyv

「「うんこタンク!!!」」

 間違うはずもない、たった今、走り抜けていったのはあまりにも見慣れた顔の奴だ。
毎日話をし、共にいたずらをして遊んでいた、あの三戦うんこ@うんこタンクである。
「うんこタンク・・・。すげえや!一番うんこだぜー!」
孫策は我が事の様に喜び、ガッツポーズをした。うんこの快挙を祝って。
 今まで日陰者と言われ、人目につかないように活動をしてきたうんこが
ここに来て、やっと活躍の場を得たのである。
孫策の感じた喜びは、計り知れない程のものであった。
「大兄・・・、俺凄い嬉しいぜー・・・
 うんこでも、こんなに格好よく活躍できるなんてなー・・・」
「孫策、俺も同じ事思ったYO・・・
 タンクは・・・、うんこのイメージを変えてくれたな・・・」
 ゆるゆると孫策、二人は映像のみが放送されているテレビを見つめ続けた。
本陣の慌て振り、手早く作成される抜刀隊のAA、反撃に向けての企画、
三戦本陣から次々と飛び出してくる「三戦学園抜刀隊」の勇姿・・・
その一つ一つが、二人の心に大きな衝撃となって打ち込まれていった。

「・・・孫策・・・、あいつ・・・うんこタンクは、俺らとは違う道を見つけたようだな・・・」
ゆるゆるは咥えタバコの火を消し、頬杖をついた姿勢でつぶやき始めた。
「孫策YOー・・・、こんな歌知ってるかー?」
985無名武将@お腹せっぷく:02/08/02 17:30 ID:4UzQplyv

  うたを わすれた かなりやは
  うしろの やまに すてましょうか
  いえいえ それは なりませぬ

  うたを わすれた かなりやは
  せどの こやぶに いけましょか
  いえいえ それも なりませぬ

  うたを わすれた かなりやは
  やなぎのむちで ぶちましょか
  いえいえ それも かはいさう
986無名武将@お腹せっぷく:02/08/02 17:31 ID:4UzQplyv

「ゆるゆる大兄、その歌なんだー?」
横目でテレビを見つつ、孫策はゆるゆるに問い掛ける。
「この歌はなー、むかーし流行った歌だYOー。
 なーんとなく俺らの境遇と似てないかー?
 叩かれまくってた俺らとさー・・・」
「・・・うたを わすれた かなりや・・・かー、
 似てるぜー、俺達うんことそっくりだぜー」
二人はしばらくぼんやりと感慨にふけっていた。
互いの心の内ではおそらく、様々な思いが駆け巡っていたのであろう。
その中には、生徒会に対する妬みもあったかも知れなかった。
「・・・俺達、今の三戦に必要とされてんのかー・・・?」
「さあな・・・、それすらも分からんYOー・・・」
 そうこうしている内に、テレビ中継が三戦の反撃を伝え始めた。
続々と到着する援軍と、士気高まる本陣、次第に弱まってくる雷雲。
 テレビは黙々と伝え続けた。
甲冑を身に付け、自分の出陣を待っている三戦学園生徒の姿と
うんこタンクが孫策達の到着を信じ待っている姿を。
987無名武将@お腹せっぷく:02/08/02 17:31 ID:4UzQplyv

 その時、乱雑に積まれたガラクタが崩れ、奥の方からある物が顔を覗かせた。
それは、うんこ用に改造された二揃いの武具。
うんこタンクが合戦前に作っておいた手作りのものだった。
『きっと誰かが使うだろう』
そう願って、うんこスレに放り込んでおいた真新しい武具――
 ゆるゆるは武具を手に取り、勢いよくうんこスレの戸を開け放つと、こう叫んだ。

 「行くZO!孫策!!」


  ・・・うたを わすれた かなりやは
    ざうげのふねに ぎんのかい
    月よの うみに うかべれば
    わすれたうたを おもひだす・・・


―終わり―
988無名武将@お腹せっぷく:02/08/02 17:32 ID:4UzQplyv
懲りずにまた書きますた。
今時「かなりやのうた」を知ってる人は、いないだろうな〜(w