hey! トーナメントで萌えpart40

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970967続き

「テンさーん、こっち、こっちー」

約束の待ち合わせ場所は予想した以上の混雑ぶりだった。
電車の中から嫌な予感はしていたのだ。
一つ一つ駅に着くたび、恐ろしいぐらいの人が電車に乗り込んでくる。
最寄り駅に着く頃には、朝のラッシュ以上の人が車両の中でひしめきあっていた。
無理にでも断ればよかったかもしれない・・・
そんな思いが、何度もテンプレ屋の心に湧き上がってきていた。

電車から降りても、ホームに人があふれていて改札にもなかなか辿り着かない。
ジリジリと列が動き、ようやく待ち合わせの改札を出る。
さて、と一息つく間もなく辺りを見回しザクを探すが、この人混みの中から
たった一人を見つけるなんて、まったく無理な話に思えてくる。
ムッとするような人いきれと、耳をつんざくばかりの喧噪に
ほとほと嫌気がさしてきた時、聞き覚えのある声が自分を呼ぶのが聞こえた。

「まったく、すごい人ですね」
「・・・兄さん、その穴場って本当に大丈夫ですか?」
「まーかーせーなーさい!」
上機嫌の彼に気付かれないよう、そっと溜息をつく。
「じゃ、行きましょうか」
返事を待つことなく、サッとテンプレ屋の手を取ると出口を目指し
人混みをかきわけ歩き出した。

971風と木の名無しさん:02/08/02 00:36 ID:zBPocw++
「到着!」
「ここ、ですか?」
「ここです!」
行けども行けども途切れることの無い人人人の中を、しっかりと手を握られたまま
引きずられるように連れてこられたのは、とあるマンションの前だった。
「もしかして・・・?」
「ワタシの部屋からだと、目の前に花火が見えるんです」
安堵のあまり、一瞬膝から力が抜ける。
さりげなくザクの手が背中にまわり、体を支えてくれた。
「もしかして、疑ってました?」
笑いの滲んだ声で聞かれ、そうだと答えるわけにもいかず
テンプレ屋は言葉に詰まる。
「いや、特等席なんですよ。クーラーもあるし、ビールもあるし」
ようやく体制を立て直し、ひとまず頭を下げた。
「特等席にご招待つかまつり、かたじけない」
「ごゆるりと楽しまれよ」
そこでようやくテンプレ屋に笑顔が戻り、ザクはほっと胸を撫で下ろした。


972風と木の名無しさん:02/08/02 00:37 ID:zBPocw++
「まさに特等席ですね。花火がこんな間近に見るとは・・・」
「貴殿のお気に召しましたでしょうか?」
「うむ、余は満足じゃ」
窓辺にもたれながらビールをあおっていると、この上なく幸せな気分に包まれる。
開け放した窓からは、ムッとするような蒸し暑い風が流れ込んでくるが、
クーラーの効いた部屋から漏れる涼しい空気が背中をかすめ、暑さは気にならない。
「しかし、ちょっと計算外でした」
「何がでしょう?」
「確かに部屋からは部屋からですけど、この窓からしか花火が見えないことを忘れているとは」
「いや、十分堪能させて頂いてますよ、兄さん」
「そう言って頂くと、ちと恐縮です」
「でも・・・」
「でも?」
「大の男二人で並んで見るには、この窓はちょっと小さいかもしれませんね」
「むむ・・・確かに」
思わず顔を見合わせると、同時に吹き出してしまった。
すぐ傍に感じる自分とは違う体温に、外の熱気とは違う温度を感じる
笑いが止まっても、何故か相手の目から視線が外せなかった。
ザクの目に映る自分に見つめられる気まずさから、テンプレ屋が視線を外そうとしたその時。
ふわり、と頭を引き寄せられた。
ザクの目の中の自分が、さっきより大きく見える。
これ以上自分を見ていられなくて、そっと瞼を閉じた。
───体温が更に近くなる・・・

973風と木の名無しさん:02/08/02 00:38 ID:zBPocw++
ピーンポーーン♪
ドンッドンッドンッ
「おーい、ザクいねーのかー?」
「ザクー、来てやったぞー」
「ザク兄さーん。花火見に来たー」
「兄さんはーやーくー。ビール温くなっちゃうよー」


ビクリと体が跳ねた。そのまま唖然と玄関へ視線を走らせる。
なんなんだ一体・・・。
くすっというテンプレ屋の笑い声で、ようやく体の硬直が解ける。
「兄さんお客さんですよ」
「いや、あの、これはー。ええとー。別にワタシが呼んだわけじゃなくてー」
「ご心配なく。分かってますよ。ほら早く開けてあげないと」
あたふたと言い訳するザクの耳元に囁きを落とす。そして、そっと頬に唇を寄せた。

ガチャリ。
「ザクー、何やってんだよー」
「外はあちーんだから、とっとと開けやがれってーの」
「あっ、テンプレ屋殿も来られてたんですかー?」
「こんばんは」
「おい、二人でどんだけ飲んだんだ?ザク、顔真っ赤だぞ!」
「いや、これは、その・・・」
「酒もつまみも大量に買ってきたから、パーっとやるぞ」
「おじゃましまーす」
ドヤドヤと部屋に上がり込んできたお邪魔虫達の後ろ姿に、そっと溜息をつくザクだった。