【hey!】トーナメントで萌えpart32【三戦!】
ふぅ、と思わずため息が出てしまう。
長く続いたトーナメントもついにブロック決勝の時を迎えていた。
予選最終組に登場した海外サカは妹の国内サカを始め多くの仲間に支えられ、
ついにAブロック決勝まで駒を進めることになった。
相手は強豪ダウソ。得意なサッカーに例えればブラジルやドイツと言うところか。
勝負を捨ててかかる気は毛頭ないが、勝ち目が薄いのは事実だ。
「何か包囲網が出来てるような気がする」
今まで協力してくれていた仲間達は実はダウソとも仲が良いところが多く、ふと
気が付くと「どうしよう、やっぱ最近仲が良いダウソさんの応援かな」と言う声が
多く。言われてみればワールドカップに夢中で挨拶程度しか交流してなかった。
今更悔やんでも仕方がないが、孤独感が溢れてきて、またため息が出る。
「元気ないなー」
聞き慣れた声に顔を上げると、仕事帰りなのかスーツ姿の株式がそこにいた。
予選の時から同性愛とともに数少ない同盟としていつも応援してくれている、
彼。2回戦ではよりにもよって対戦相手としてあたってしまって、お互い全力で
戦って僅差で勝ち上がったのが自分の方だった。試合中に「ほんとは海外サカ
を応援したいんだ」とまで言ってくれた。
本音を言えば自分だって株式を応援したかった。負けを考えるのは嫌だけど、
株式になら負けても良い、とも思った。
試合が終わって「俺らの分も頑張れ」と言われて気が引き締まった。勝ち抜いて
行くという事は、対戦相手の気持ちも背負うことなのだと。
「株式さん」
「久しぶり。ため息なんてついてどうしたんだ?」
お互い忙しくて、こうして顔を合わせるのはほんとに久しぶりだった。
ちょっと前、同性愛の試合では一緒に応援したが、多分それ以来だろう。
笑顔で話しかけてくる彼に、つられて笑みが浮かんだ。
「明日試合なんだけどさ、きっついなーと思って」
愚痴になるのは分かっていてもついそうこぼしてしまう。彼なら甘えても許される
と思うのはわがままだろうか。
「あー、そっかダウソさん強いもんな。でもお前も強いだろ? ここまで勝ってきたん
だから」
「俺は皆が助けてくれたからで……特に妹とか同性愛さんとか株式さんとかに
頼りきってて……。自分じゃ何も出来ないから」
「それじゃお前に負けた俺は何だよ、って言いたいとこだけど。お前にも武器は
あるだろ、サッカーっていう奴が」
はっとして、思わず株式の顔をまじまじと見つめてしまった。
そうだ、何をうだうだ悩んでいたのだろう。自分にはサッカーしかない。そんな
の最初から分かっていたことだ。このトーナメントに参加する最大の目的は、
サッカーをもっと広めたい、ということだったはずだ。そのための交流だった。
ワールドカップ中、色んな人が「サッカー見てるよ」「日本勝ったね、おめでとう」
そう言ってくれて嬉しかった。「君たち兄妹のおかげでサッカー見るようになった」
そんな声もたくさん聞けた。その度にこのトーナメントに参加できて良かったと
思ったのではなかったか。
こんな大切なことを忘れていたとは。
「そう、だね、うん。ダウソさん応援の人にも振り向いてもらえるような支援物資を
作ればいいんだよな」
「そうそう。ちょっとは元気になったかな。俺も相場があれで満足に応援出来るか
自信ないけど、頑張れ」
口調は軽いが心のこもった激励に、胸が熱くなった。
自分は一人じゃない。こうやって支えてくれる仲間がいる。だから自分は精一杯
やれることをやろう。悔いの残る試合だけはしたくない。
「ありがとう、頑張るよ。じゃあ、明日の準備があるから、また」
「おう。しっかりな。お前には俺達がついてること、忘れんな」
「忘れないよ、もちろん。ほんとにありがとう」
・・・・・・決戦は7/5。
書き逃げします。すみません。