【4日】hey!三戦へ愛と萌えの1票を!【決戦!】
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どこのbarでもそういうものだが、ほの暗い照明は空気を変える。
それは、女性を美しく、少々寂しげに見せてより魅力的に見える
ようにするのだという話を聞いたことがあるが、何もそれは
女性に限った話ではないと、ザクは思う。
「正直、トーナメントが始まってから痩せましたよ」
気心の知れた仲間としゃべってさっきまで笑い死にしそうに
なっていたテンプレ屋が名残の笑顔でザクを振り返る。
「そうですか。そんなに?」
とうにそんなことは知っていたけれど、ザクは気づかない振りをする。
無理をしないでと言ったところで自分は彼の仕事とは何の関係も
とうにそんなことは知っていたけれど、ザクは気づかない振りをする。
無理をしないでと言ったところで自分は彼の仕事とは何の関係もない。
だから今まで言いたくても言おうとは思わなかった。
「腰回りなんて一回り緩くなりましてね。少々無理をした時期もありましたから。
まぁ後進も育っていることだし、しばらくはゆっくり行きますよ。」
そう言いながら褐色のグラスを傾ける横顔は柔らかな灯りのせいで一層
陰影を帯びて見えた。さっきまで笑っていたせいだろう、あまり痛々しい
印象はないが、それでも初めて出会った頃の、どちらかと言うと冷徹な印象
より大分砕けて、そしてその分疲れが微かに見える。
それが見える位に近づけたのか、とも思わないでもないけれど。
正直言って、それが嬉しいのか辛いのかザクにはよく分からなかった。
ただ時々胸がきゅっと捕まれたように軽く、痛んだり、するだけだ。
昔々、こういう痛みをもっと知っていたような気もするけれど、もはや
そんな多感な年でもなく、ただザクは心の奥底でその痛みに密かに
うろたえながら、それでも大人の顔で平然と笑うしかできない。
984 :
3/9 :02/06/08 15:49 ID:cKY/dePS
自分が一人でいたい時でも、邪魔にならない不思議な存在感が彼には
あるような気がする、とテンプレ屋はふと思った。こうして独り言の
ようなつぶやきに、応えるでもなく相づちをうたれると、やたら心配
されたり誉められたりするよりもよほど落ち着いた。
むしろ、落ち着くと言うよりも、あれだな、・・・・楽なんだ。
借りも貸しもなく、利害もない。むろん、仕事上の繋がりもなくお互い
たまたまここにいた。ここでなければ会うこともなかっただろう。
萌えたり祭りをしたり、姐さん達とこれ以上ないくらいに馴染んでいるのに
こうしているとき、彼はまるで影みたいだ。でも決して無人格ではない。
「可愛い人」と自分が彼を評したのはいつのことだったか、随分昔の様に
感じている。あのとき、本当は「不思議な人ですね」と言うべきだった
かもしれないと思った。
985 :
4/9 :02/06/08 15:50 ID:cKY/dePS
戯れにグラスを傾けるとからりと氷の音だけが響いた。いつの間にか
液体は無くなっていたらしい。
それに気づいてザクがバーボンのボトルに手を伸ばす。
「足しますか?」
「・・・いや、無理はしないでおきましょう」
すっかり平然と笑うのが癖になったな、と思いつつ、テンプレ屋は微笑む。
「実は仕事に張り付きすぎで腰を痛めましてね。
椅子に座っていられなくなってしまったりしたんですよ。」
「え」
流石にぎょっとした様子のザクを見て、苦笑してみせる。
「年ですな」
「ちょっと、ワタシとそう変わらないくせに何を言ってるんですか。」
「年ですよ、貴方はまだまだ若い」
986 :
5/9 :02/06/08 15:50 ID:cKY/dePS
ザクといい、萌え団といい、純といい、皆、若くて、そして不思議だ
と思った。若いというのはこんなに不思議な事なのだろうか。
不思議という言葉は魅力的と言い換えてもいいのかもしれない。
そして自分が仕えている殿も、どう考えても自分より相当若くて、
そして不思議な感じがした。やんちゃなのか、公平なのか。あるいは
天然なのか全く解らない。仮の、算定的な仕事のつもりだったのに
いつの間にかあり地獄に填るようにすっかり入り込んでしまっている。
もし首領が彼でなければ、自分はどうだっただろうか。
一瞬、そんな思いに囚われた自分をザクが見ている。
「歩くのに支障ありませんか?なんだったらワタシがお送りしますが」
「いや、それには及びませんよ」
987 :
6/9 :02/06/08 15:51 ID:cKY/dePS
くすくすとザクが笑っているのに気づいてテンプレ屋は顔を上げた。
「?」
「姐さん方に縄を付けてでも引っ張ってこいと言われてるんですけどね」
「今日はご勘弁下さい、と言うところですかね」
「そのようで」
背の高い椅子を降りようとした自分を支えるように、ごく自然にザクが
手を伸ばす。その瞬間、不意にがくりと膝の力が抜けた。
倒れるかも知れない。
その一瞬、ザクの腕に包まれながら心底脱力して目を閉じる自分の夢を
テンプレ屋は見た気がした。
988 :
7/9 :02/06/08 15:52 ID:cKY/dePS
「大丈夫ですか?」
少々焦った様子の声にテンプレ屋は我に返る。どうやら気を失ったように
感じたのはほんの一瞬らしい。がくりとしたのは椅子が揺れただけで、
ザクの手は、実際には自分を支えてもいなかった。
「・・・もちろん、大丈夫ですよ?どうかしましたか?」
「・・いえ。何も。 ・・・・・・お気をつけて
貴方の事を心配している人はたくさんいますよ」
「ありがとう。 それではお先に。お休みなさい」
失敗をしても、何事もなかったように平然と出来るのが自分の特技だと思う。
にこりと笑った中にも微妙に心配そうな表情で、ザクが自分を見ている。
テンプレ屋はそれに笑みを返すと歩き出した。そんな自分を少し狡猾だと思いつつ、
でもそれが年の功でもあると思いながら。
989 :
8/9 :02/06/08 15:53 ID:cKY/dePS
一瞬の夢を見た。
それが許されるほど純な動機でこの仕事・この名前になったのでもなく、
単なる成り行きでここまで来た癖に。
その夢を甘いと思う程に、その甘さを欲しがる程に自分は疲れていたのだろうか
と自問自答するが、よくわからなかった。
ただ、それでも自分よりも大変な人間が確実にいると思う。
本来はその人間の為に、出来ることをしただけの始まりだったのに。
訳の分からない状態になりつつある自分を冷笑しながら
テンプレ屋は一人歩く。まず考えなければならないことが山積みだと
いうのにどうしてこんな下らない想いに気を取られているのか。
990 :
9/9 :02/06/08 15:53 ID:cKY/dePS
何が始まりだったのか、もはやテンプレ屋自身にもわからず、ただきっかけと
なったこの仕事を全うさせることが先決だと、疲労した頭で考えた。
ただ彼を手助けして、行けるところまで行って最後に玉砕して、
そうして全てが終わってから。
自分が何に動かされていたのか考えればいいと思った。
いつの間にか昇っていた朝日が眩しくて、テンプレ屋は目を細める。
何かのために前に立ち向かおうとする自分と、それと裏腹に
ついさっきまでごく自然にいた存在にすぶずぶと倒れ込む夢を見た
自分が不本意なほどに一致しない。
その矛盾が我ながら可笑しくて、テンプレ屋は口元でひっそりと自分を嗤った。
……ごめん、泣いた……泣いたよ……
そして死にそうに萌え……。
ここ数年で読んだ、一番の萌え文章かも……
姐さん素晴らしい……(涙)
>>982-990 女神様ーーーーーーーーーーー。
ありがとうありがとうー。
萌えました!!
萌え死にしそうです…って、だめだよお、自分!ここに書いたら、残りが……
このスレはしばらく埋 め 立 て ご 遠 慮 願 い ま す 。
女神様、現行スレにリンク貼っちゃダメですか?
うめ
>991-993 どうも(w
地味で萌えがない話だなぁと自分では思ってたので良かったです。
現行スレに貼らなかったのは流れをぶったぎるのが嫌だったからなだけなので、
url貼り付けはどうぞご自由に。ただし恥ずかしいので自分でする気はないです(w
>991 あ、ついでに泣ける話だとも全く思ってなかったので(ピュア?)
どの辺りに泣けたのか、今後の参考に教えていただけると嬉しいです。
991です。泣いたのは、自分の泣きツボにはまったからでもありますが。痛々しい人萌え。
文章的に言うと、キタのは989の最初の五行とか、ラスト五行ですね。
というか、まさにわたしの 理 想 の ザ ク テ ン。
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|┏━━┓ミ
| |┃十月┃ミ
| Ω_ |┃十日┃ミ
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「……ふう」
戦の準備を次々と進める武将たちを見ながら、文長は小さく息を吐いた。
皆、本当によくやってくれている。
我らが三戦板を勝たせたい、この戦を楽しみたい――そのために。
「…………ふ」
もう一度、誰にも気付かれぬほど小さく息を吐く。
が。
「どうしました?」
いつの間にか傍に寄っていたテンプレ屋が、他の者に聞こえないほどの小声で文長に声を掛けた。
「どうした、とは? 別にどうもしないが」
「今、溜息を吐いていたでしょう? それも二回」
テンプレ屋のその言葉に、文長はほんの少し目を見開いた。
誰にも気付かれていないと思っていたのに、どうして彼は気付いたのだろう。
「なんでわかったんだ?」
「気付かないとでも思いますか?」
そう言いながら、テンプレ屋は固かった表情をふわりと和らげた。
「貴方は我らが殿なんですから。いつも注目されていると思っていた方がいいですよ」
「……俺がいなくても皆がきっちりやってくれると思うんだが」
先程、働いている武将たちを見ながらつい思ってしまっていたことをそっと呟く。
「本当にそう思いますか? 貴方のことは皆が認めていますよ。それに……」
一瞬眩しげに目を細め、テンプレ屋はそれからもう一度にっこりと微笑む。
「私も、貴方の役に立てていると思うと、嬉しく思いますし」
何気なく、さらりと告げられた言葉に、恥ずかしく思うと同時に少し癒されたような気がした。
「そうだな。俺も頑張ろう。ついてきてくれるか?」
先刻とは打って変わった明るい表情を見せる文長に、テンプレ屋は笑みを深くした。
「かしこまりました。殿」
――――彼らの熱い戦いは、まだ続く。
コソコソするかのぅ。
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もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。