都内s57生まれのアウトロー

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184押忍〜B卍E〜
M田とK野とS藤は、夏が終わりを告げる頃、秋の夜風と共に消えた。
 忘れもしない九月の夜。仲間の一人が半殺しにされた。それも喉、急所、背中、足をメッタ刺しに。

 暴走族に対する知識の無さや、先輩達への甘えが、そんな結果を招いたのだろう。
彼等は怯えていた。相手の勢い、先輩からのヤキ、全てに対し怯えていた。
 結果が出せない彼等に与えられた、数え切れないヤキ、罵倒。
そして自分達の看板の重みが、いつの日か彼等を変えた。

 変わり果てた姿と瞳。それは正に特攻隊の様だった。
「俺の仲間をあんな目に遭わせやがって」「俺達は死んでも負けねぇ」
彼等のそんな心の葛藤がありありと目に浮かぶ。
少数精鋭の度重なる襲撃、OBはOBを叩くという圧力作戦。
たった七人で五〇人に挑む彼等の心境とは、どんなものなのだろう。
 彼等の勢いは抗争のペースを完全に自分達のものに変えた。
途中一人が入院し、二人の者が恐喝と窃盗で逮捕され四人になっても、その勢いは止む事を知らなかった。
止まぬ彼等の勢いは、まるで六月の雨の様だった。
 相手宅へのカチ込み。まずは龍神曾を刺し、続いて殺人曾を攫い、少しずつやる気と答えを見せ始めた。
 全てを賭け、負ける喧嘩に挑む彼等の姿に、誰もが感動を覚えた。

 
185押忍〜B卍E〜:04/12/08 18:00:03
そして一〇月一三日。彼等は菊乱曾を殺した。
 敵の背中を貫いた一本の包丁は、彼等の魂だった。
 仲間をやられた悔しさ、傷つけられたプライド。
世間はやり過ぎだと騒ぐけれども、数知れぬ屈辱を受けた彼等に、やり過ぎという言葉などない。
 翌日の新聞で相手の死亡を確認してから、彼等はきっと眠れぬ夜が続いた事だろう。
そんな彼等を支えたのは、敵を取ったという満足感だけだった。仲間の為に人を殺す。
そんな不器用な人間がいるのだろうか。
しかし、晴れた青空は続かない。
 半殺しにされた本人は、その時何をしていたのだろう。
彼の為に仲間は動いた。だが彼は、刺された傷を理由に一度も襲撃に参加していない。
 怯え。いや、それだけではない。彼は事件の翌日、「仲間の為に俺が行く」と言った。
「俺の為にやってくれたのだから、俺が出頭するのなんて当たり前だ」という、飾り文句と共に。
 この世の中に神様はいない。彼はそのまま姿を消した。
 「有り難う、ごめんね」そんな言葉もなく。
 しかし仲間は。それを当然の事の様に受け止めた。仲間の為にやれという、
先輩の言葉を良い意味で裏切り、自分達の為に闘い抜いたからだ。
張本人は逃げた上に警察に全てタレ込んだという事実も知っていながら、
顔色一つ変える事なく、ただ黙って拳を握り締めていたのだと思う。
 彼は人間のクズだ。男の風上にもおけないとはこの事だろう。
 彼という人間に対し、苛立ちを覚えない人間などいる訳がないと言い切れる。
 身内からのタレ込みがあれば、捜査本部の動きは光の様に速い。
気がつけばY口はもう、娑婆の中にはいなかった。
 残り三人に札が出るのかなど、考える必要がない。
 札が出てる人間を匿えば、OBもやられる。
 警察がくれた時間は一週間。一〇代の少年達に一週間で何が出来ただろう。
 先輩達に迷惑は掛けられない。そんなチンケな拘わりの為だけに、彼等は首を縦に振った。
彼等の潔さに、僕達は感動せざるを得なかった。出て来る頃には、皆成人。
一〇代最後の一週間は彼等に何をくれたのだろう。

 
186押忍〜B卍E〜:04/12/08 18:00:51
神社の中での待ち合わせ。笑顔で撮った最後の写真。
先輩達から貰った逃亡資金五〇万でキャバクラに行き、大人の真似事もしてみた。
 しかし、時間は止まらない。

 約束の日一〇月二五日、彼等は笑顔で消えて行った。
 むしろ泣きたかったのは、僕達だった。
暴走族というチッポケな世界で、彼等はチッポケな英雄になった。
 だけど僕は。そんなチッポケな英雄に、心の底からエールを送りたい。
 頑張れ。そして、何にもしてあげられなかったこんな僕達を許して欲しい。
 今彼等は留置場という檻の中で、何を思っているのだろう。
 彼等が出頭した頃に、東京は珍しく雨が降った。
それは、不器用過ぎた真っ直ぐな殺人犯が、決して見せる事の出来なかった最後の涙なのかも知れない。
187押忍〜B卍E〜:04/12/08 18:07:09
お前らには、絶対分からない。
暴走族を見下すのは自由だ。
だが、パソコンしか生きがいない貴様らは可哀想だな。
これは、事実。わかるよな?練馬?