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名無しさん@お腹いっぱい。:
ちなみにジキジキとは、東南アジアからインド文化圏まで広く通じる困った隠語で、ズバリその行為のことを指す。そのうえ爺はどこから聞いてきたのか、マンコという単語まで知っていた。
ところで、厳格なイスラム教国のバングラデシュにも、ダッカ郊外の港町に広大な売春窟が存在するらしい。ちなみに知ったキッカケは、古本屋で見つけた一〇年以上も昔の手書き旅行ミニコミ。いまでもあるのか定かではないので町の名前は伏せておくが、町全体が牢獄兼売春宿のようになっていて、売られてきた女の子たちは外にもロクに出られないまま、使い物にならなくなるまで働かされる運命にあるという。ま、まさに地獄。
そこまで悲惨な場所を見たいと思うほど悪趣味ではないので、とりあえずもう少し軽めのところで、これも人づてに聞いた「旧市街の売春街」というのをいっぺん覗いてみたいと思い、さっそく爺に指示するが、どうでもいい単語ばかりクソみたいにたくさん知っているくせに、肝心な話になると彼の理解力は大幅に衰え、話がさっぱり通じない。もしくは最初から知らないかのどちらかだ。
仕方ないので爺のなすがままに黙っていると、奴はおもむろに人力車を走らせ、どこに行くのかと思ったら、大学の校門前で車を停めた。一体何の真似だ!
「なんでこんなところに停めるんだよ!大学だろう。ここは」
「イエース。女子学生がここでジキジキの客をとってるよ。ベリーチープ」
そう言われてみると、もう日も沈んで辺りは真っ暗だというのに、校門の周りには不自然なほどたくさんの若い女(らしき人影)が立っている。もともと女性の通行人自体が珍しい国で、これはどう見ても異常な光景である。やはり学費を稼ぐために売春しているのだろうか?
「・・・で、いくらなの?」
「ベリーチープ、マイフレンド。七五ダラー。チープ、オーケー?」
「はあ?」
「ワンナイト。ユーテイクガールホテル。ノープロブレム。」
「なんでこんな国で七五ドルも払うバカがいるんだよ。老いぼれ詐欺師!」
「オー、ノー高いネー」
「てめえ、バンコクでソープ行ったって五〇ドルしないんだよ。頭大丈夫かよ?」
「オー」
「おまえの知ってる一番安いとこ連れてけ。安くなかったら殺すからな!」
「オーケー、マイフレンド、ソーリー、ヒャヒャヒャ。キコキコキコキコ・・・」
大学前で(バングラ人に比べて)派手な服を着て、人力車に乗ったバカな外国人が一人、大声で怒鳴っている間抜けなシチュエーション。まさにかっこうの見せ物である。というわけで、この時点で半径五〇〇メートル以内の注目を一人占めしており、気持ちはもうヤケクソになっていた。
爺がひたすら人力車をキコキコ漕ぎ、たどりついたのは薄暗くなった広場だった。
広場には芝生が敷いてあるようだが、その芝生も見えないほど無数の物乞いがうずくまっていた。どうやらここは彼らの寝床になっているらしい。なかにはテントを張って火を焚き、自炊している強者もいて驚かされる。もしかして・・・。
「あー、もしかして、ここかい?」
「マイフレンド、勘がイイな」
「どこにいるの?」
「そのへんに寝てる女だよ、マイフレンド、ヒャヒャヒャヒャッ」
「もしかして、ここでやんの!?」
「ノーノー、ハンドオンリー!五〇タカ、ベリベリチープ!」
そう言うなり爺は、右手を空中でシコシコと動かした。なーんだ。手コキかあ。こんなところでやられたら、テレビ中継でもされちゃいそうだな・・・。すごいなあバングラ人は・・・。帰るぞバーカ。ホテルに戻れ!この腑抜け爺!