22世紀から回顧する21世紀全史〜 歴史として見た未来
1投稿者:ヾ(゚д゚)ノ゛バカー  投稿日:2004年01月26日(月) 00時51分29秒
これはSFなのか、それとも“仮想歴史書”なのか、奇妙な錯覚に囚われてしまう。ある歴史学者が西暦2112年の時点に立ち、21世紀の100年間をふり返るという設定だ。生身の我々が21世紀に入ったばかりだというのに、なんとも大胆不敵な構想が心憎い。
 『全史』は、人類が進化の舵を取る事に成功したバイオ革命から始まる。核戦争にまで発展した印パ紛争や、ネット取引過熱で株式市場が崩壊した世界不況、EU崩壊と再統一等の混沌の時代、地球の人口百億人時代到来と解決されない環境破壊、貧富の格差等が、巧みに描かれる。
 こうした「歴史」に厚みを持たせ、読ませるのが、時代の宿命を背負い、争い、敗れてゆく市井の人々や英雄達のドラマだろう。
 米国のクローン人間の男は「体や脳は老人なのに、34歳の経験しか持たない」と境遇にジレンマを抱える。何でも体験できる仮想世界では、自分の分身が恋に落ちてしまい、主人公が妄想に取りつかれてしまう。
 長命が約束されても、85歳以上の老人の2割が自発的安楽死を選ぶという心の貧困な時代も描かれている。多くはシニカルな結末を迎えるが、それはまさに我々の現在が抱える問題の複雑さそのものでもある。
 更に、強大な工業国となり軍事力で米国と比肩するまでに台頭した中国。片や少子高齢化が進み、政治家達の理想欠如や崩壊寸前の金融システムによって衰退に向かう日本が登場するが、いささか辛いものを感じる。
 それでも荒唐無稽にならずリアリティーが溢れるのは、正確な現状認識と知識の裏付けによるものだ。SFと読むか“歴史”と読むかは、読者の目にかかっている。

ジェントリー・リー、マイクル・ホワイト著 高橋知子、対馬妙訳
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