日本やアメリカと異なり,ほとんどの患者が公的医療(National Health Service NHS)に依存しているイギリスでは,特に病院や診療所の救急外来の待ち時間が長い。GP(家庭医)は内科診療が中心となるので,けが,火傷,骨折などの一般的な外傷から,交通事故や心筋梗塞のような緊急事態まで,すべてが救急外来にやってくる。そうなると重症度の高いほうから優先されるので,待ち時間はさらに長くなり,4〜5時間はあたり前といった状況になる。
メディケイドは、低所得者と認められた者が加入できる州管轄の健康保険である。これの加入者が病院で治療を受けたとき、治療費はメディケイドが肩代わりして病院へ払ってくれる。これは、通常の健康保険制度と同じですね。しかし、民間の健康保険会社(アメリカでは健康保険は民間企業が保険商品として販売してるんですよ)がある病気に対し支払う額を100としたときに、メディケイドは45〜60であるらしい。同じ病気の患者さんを診ても、病院が得る収入は、患者さんが民間の健保に加入しているかメディケイドに加入しているかで大きく変わってきてしまう。 また、アメリカのERでは、治療費の支払い能力がない患者さんも、症状が安定するまで追い出されることはない。これは1985年に制定された連邦法 EMTALA(Emergency Medical Treatment and Active Labor Act)に定められている。この法が出来てから、低所得層が病気にかかったときにERを利用するようになり、その結果、現在では、病院によってはERでの 3〜4時間待ちは当たり前、ひどいときは7〜8時間待って3分診療を受ける、ということもあるそうだ。で、この長蛇の低所得層の治療費を誰が負担するのかというと、診察した病院である。なので、診察しても仕事が増えるだけで収入に結びつかないから、必然いいかげんな診療になったり、研修医の治療の練習の場となってしまうそうだ。